"With Roots in Kenshi Yonezu — Para-Artist MUSASHI, Creator of the Floral-Patterned Billiken Statue, Goes from the Expo to the World" 米津玄師が原点 花柄ビリケン像つくったパラアーティストMUSASHIが万博から世界へ
POST : 2025/08/06
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大阪関西万博 ギャラリーwest【世界のMUSASHI個展】

2025年大阪・関西万博を機に世界へ羽ばたこうしている大阪出身の若きパラアーティストがいる。知的障害を抱えながら自由な感性と多彩な色使いでその作品が注目されているMUSASHI(武蔵)さん(21)だ。夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の万博会場で7月に2日間にわたり開いた個展では、彩色した大阪のシンボル、ビリケン像をはじめ多くの作品を出展し、訪れた延べ約3万人に感動を与えた。MUSASHIさんは「どんな壁があっても、みな一歩一歩進むことで夢はかなう」と訴えている。
「こんな大イベントに立たせてもらい、本当に楽しい」。MUSASHIさんは万博への参加を笑顔でこう語った。
会場の「ギャラリーWEST」で7月9、10日に開いた個展に出したビリケン像は、この2日をかけ、来場客の目の前でつくりあげた。白い樹脂製の像をアクリル絵の具やスプレーで彩色。オレンジ、青などの色を使い、花柄や「POP」という文字をちりばめた独特の世界観を表現した。
この像は、繊維商社「田村駒」(同市中央区)本社にあるビリケン像(高さ52センチ、幅35センチ)のデータをもとにつくられたもの。同社は明治時代、「通天閣」(同市浪速区)に先んじてビリケンを米国から〝輸入〟し、今も日本での商標権を持っている。
MUSASHIさんは「(今回は)絵の活動の集大成。こんなにみんなが感動してくれるのかとびっくりした。成長の一歩を踏め、すごくうれしい」と話す。展示したのはこのほか、やはり花柄が印象的なウサギの像やシューズ、自動車など。有名人の似顔絵なども数多く出し、豊かな才能を惜しみなく披露した。



MUSASHIさんは大阪府寝屋川市出身。絵に熱中し始めたのは中学生のときだ。シンガーソングライター、米津玄師さんが描いたCDジャケットに感動し「自分も描いてみたい」と思った。
絵画教室で学び始め、今や作品は絵画にとどまらずデジタルアートや立体造形にも及ぶ。2023年には二科展で入選。現在は企業やプロアスリート、テレビ番組などとのコラボレーションで作品を手掛けるなど活躍の場を広げている。
原動力の一つは、MUSASHIさんの才能と情熱に打たれた大人たちの応援だ。万博の個展もクラウドファンディングや企業の協賛で実現した。


MUSASHIさんが次に目指すのは「海外で個展を開くこと」。英語はしゃべれないが、「(言葉がなくても)思いが伝わるのが絵の面白いところ」と話す。「自分が楽しく描いた作品を見た人たちの小さなコミュニティーで、『きれい』とか『かわいい』とか(の感動)が生まれるだけでアートをやっていてよかったと思う」。
MUSASHIさんが所属する、就労支援事業を手掛ける「石富プロパティー」(大阪府寝屋川市)の中井健太社長は「感謝を忘れず、常に謙虚に自分の作品を思いきり発表していってほしい」とエールを送る。多くの人の応援を力に世界への飛躍を目指すMUSASHIさんの挑戦は、始まったばかりだ。(山口暢彦)